全国共済は子供たちの輝く未来を応援しています。

スペシャル対談【第25回】子育て支援 社会全体で

神奈川県知事 黒岩 祐治 プロフィール

昭和29年9月26日生まれ(兵庫県神戸市出身)
昭和55年 早稲田大学政経学部卒業
昭和55年 (株)フジテレビジョン入社
平成21年 9月同退社
平成21年10月国際医療福祉大学大学院教授
平成23年 3月同退職
平成23年4月 神奈川県知事に就任
平成27年4月 神奈川県知事(二期目)に就任
平成31年4月 神奈川県知事(三期目)に就任
趣味:歌、ミュージカル 、ダイビング
座右の銘「愚直」

上関 康樹理事長 プロフィール

上関 康樹/全国共済神奈川県生活協同組合 理事長
1954年横浜生まれの横浜育ち。大学卒業後、金融機関勤務を経て、平成6年12月、全国共済に。
生粋の浜っ子で、神奈川への想いはひと一倍、そして未来の神奈川を担う子どもたちへの愛情と責任も感じていて、おもに子どもたちをどう支援していくかを考えている。
趣味はアンティークと自転車。週末はロードサイクルで走ることも。

多様な施策で総合支援

-子育て支援における、神奈川県の最近の取り組みについて教えてください。

黒岩

待機児童ゼロを目指す中で、保育士不足の問題がクローズアップされました。保育士試験は年1回でしたが、国家戦略特区の制度を活用して、県独自でもう1回追加で試験を実施しました。この地域限定保育士試験は、合格すると3年間は県内でしか資格が通用しませんが、その後は全国で通用する保育士になれるものです。すると翌年から、国も試験を年2回に増やしました。そこで県は、さらに地域限定で3回目の試験を実施しています。これによって、県内の保育士試験の合格者数は大幅に増えています。
また県は、「かながわイクボス宣言」を行いました。「イクボス」とは、職員・社員の育児や介護への参加に理解を示す上司という意味です。それをアビールするため、職員が自分の子どもも参加させて、みんなで歌って踊る動画も作りました。制作過程でのふれあいを通じて、イクボスが庁内で浸透したような印象があります。
そのほか、社会的影響力のある大企業などの男性卜ップに女性活躍推進の意識改革や行動変革を図る「かながわ女性の活躍応援団」の取り組みや子育てそのものを支える仕組みも多くあります。「かながわ子育て応援パスポ一ト」では、協力店舗に同パスポートを提示すると、景品や割引といったサービスを受けられます。また「パパノミカタ」というウェブサイトでは、パパが育児に参加するためのアドバイスなどをまとめて紹介しています。
地域で子育て支援などに貢献された方を表彰する「かながわ子ども・子育て支援大賞」という制度や子育てを応援する事業者を認定する「かながわ子育て応援団」という制度もあります。こうした多様な取り組みを通じて、県全体で総合的に子育てを支援していこうとしています。

病気の子絵本で励ます

-全国共済では、子育て支援でどのような取り組みを行っているか教えてください。

上関

我々全国共済は、元々生協が扱う非営利の共済事業です。野球やサッ力一など、子どもたちのスポ一ツ支援に加え、小児病棟への絵本寄贈にも力を入れています。
スポーツ支援では、児童福祉施設の子どもたちが出場する野球やソフトボ一ル大会への協賛でのサポートをしていますが、挨拶の機会があれば、子どもたちに向かって必ず「いじめは絶対にやめよう」と呼びかけるようにしています。それを続ける中で、同様に苦しい立場にある子どもたちの現状に関心を持つことができ、児童養護施設のお子さんが卒園するときのスキー教室の応援もさせていただいています。お子さんに、一人ではないということを分かってもらいたいという思いから始めました。
それ以外にも、子どもからの電話相談を受けるチャイルドラインについても支援をしています。また、小児病棟への絵本寄贈は、私の入院中の体験から生まれた取り組みです。病院内を歩いていて見かけた本に古そうなものが多く、これでは子どもたちが楽しめないのではないかと思い、始めました。病気と闘う子どもたちを、少しでも応援できたらと思っています。

-全国共済の取り組みについて、知事はどのように感じられましたか。また、子育て支援策での県の将来的な構想などについてお聞かせください。

黒岩

具体的に手をさしのべる活動をされているのは非常にすばらしいですね。中には重い病気のお子さんもいらっしゃる中で、少しでも潤いや安らぎをもたらすために、絵本は非常に大きな力があると思います。私たちがこれから実現したいのは待機児童ゼロです。
少子化の流れもなんとかして止めることができればと思っていますが、難しい面もありますね。それぞれの皆さんの価値観を大事にしながらも、子どもたちの存在がどれだけ人生に潤いをもたらしてくれるか、将来に向けて新しい希望を与えてくれるかというポジティブなメッセージを出しながら、子どもを生み育てていきたいと皆さんに思ってもらえるような雰囲気や環境づくりも必要だと思っています。
一方で、子どもの虐待などの悲惨な事件も撲滅していかねばと思います。それぞれ事情は違うでしょうが、子育てをみんなで支えているという態勢がないことによる孤立感や疎外感が原因で、親が子どもと向き合う中で出口がなくなっていって、虐待につながってしまうというのは本当に避けないといけません。そのために、県は電話だけでなく、実験的にLINEを活用した相談窓口を設けました。今の若者のコミュニケーション手段に合わせたのですが、今までよりもはるかに多くの方が相談してくれています。今後、こういったものを本格的に稼働させていきたいなと思っています。
また虐待があった場合、警察と全件情報共有することにも踏み切りました。虐待が起こってしまう前から、警察も一緒になって子どもたちを守っていく態勢づくりを前進させたところです。虐待のない神奈川県をぜひつくっていきたいです。

-子育てのしやすい神奈川県にするという目標は、地域活性化とつながっているとお考えですか。

黒岩

コミュニティーの力が充実しているのは、大事なことだなとつくづく感じます。子育てという視点から見ても、昔は周りにお節介な人がいて、近所の人たちも広く関わっていました。大家族の家も多く、おじいちゃんおばあちゃんが子どもを見ていてくれるといったこともありました。
ところが、最近では、都会的な地域ほど、隣人が誰か知らないというように、コミュニティー力が落ちているところがたくさんあります。育児をする親たちが孤立してしまわないように、子育てそのものを地域や社会全体で支えていくということ、具体的にはやはりコミュニティ-が活性化していることが重要だと思います。

地域の公園活用したい

-全国共済では、地域の子育て支援についてこれからどのようなことをやりたいと考えていますか。

上関

知事がおっしゃったように、かつては公園がコミュニティーの役割を果たしていたのではないかと思います。今は「公園デビュー」によるコミュニティーはありますが、大きくなってくると子どもたちは公園で遊ばなくなっています。遊具も危険だということになると、下手すれば危険な場所だということにもなっててしまっています。今後、公園を活性化するような支援策は何かないかなと考えています。

黒岩

昔に比べて、街中に子どもたちの声があまり響いていませんよね。公園を見ても、子どもたちが少なく、子ども同士でわ-っと遊んでいる景色もあまりないですよね。公園で子どもたちが騒いでいると、うるさいと言って周りの人たちが騒音として苦情を出すとか、公園内では球技が禁止されたりしています。そうなってしまうと、せっかくスペースはあっても、子どもたちが楽しく走り回れる場所ではなくなってしまいます。
みんなが関わり合って、温かい社会をつくっていくことが一番大事ではないでしょうか。例えば、みんなで公園をもっと活用しましょうとか、これぐらいのことは我慢しましょうといったことを地域の中で話し合って、流れをつくっていくことが大事ではないでしょうか。

-全国共済の取り組みの中で、プラスチック製レジ袋削減に関するものがありますが。

上関

今、環境汚染の問題でレジ袋が取り上げられていますが、セブンイレブンがこの度採用したecoレジ袋に協賛させていただきました。未来ある子どもたちへの環境保全対策も社会貢献事業の1つと考えました。

-最後に、一言ずつありましたらお願いいたします。

黒岩

私が元々言っていたのは、いのち輝く神奈川をつくっていきたいということです。人生100歳時代に「いのち輝く」ためには、みんな健康で、笑いがあふれることがとても大事です。笑いというのは、人と人がふれあうから起きるものです。そういった笑いがあふれる100歳時代。子どもたちも、高齢者も一緒になって笑っている、そしてみんな元気で活力ある社会をつくっていきたいと思います。

上関

全国共済の本部では、本年度、社会的責任の探求という方針を掲げています。これまで育てていただいた神奈川県にご社会貢献を通じてなんとか恩返しをしたい。それには、やはり一番は子どもたちからではないかなということで、今後もさまざまな支援をしていきたいと思っています。

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